現在30代子持ち主婦です。
旦那が一念発起して医師を目指し現在医師として働いています。旦那の再受験や医学生生活を支える希有な経験から、役立ちそうな情報を発信していこうと思いブログを開設しました。
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【高校受験生に向けて】医学部の地域枠について、正しく理解した上で選択したい

医学部受験の話

※この記事にはプロモーションが含まれています。

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再受験で見事医学部に受かったのは良いのですが、学費の工面に奔走していた我々が最もリサーチしていたのは奨学金についてでした。その中で医学部の地域枠で受かった学生に向けた奨学金についても知ることとなるのですが、なかなか制約がシビア!なことに驚きます。医学部の地域枠について、その制約がもたらす恩恵とリスクをしっかり理解した上で利用できるようにお母さん目線で勝手に語りたいと思います。

現役高校受験生の特権、医学部の地域枠とは

現役高校受験生の特権、医学部の地域枠とは

一般的に現役高校生もしくは浪人生が医学部を受験する時に課せられる選抜方法は、前期試験の共通一次と二次試験(学力テスト)、と後期試験の小論・面接と、他には推薦が挙げられます。

それらとは別に、地元出身者で同じ県内にある医大に進学する場合は地域枠というくくりで入学を認められる制度があります。

地域枠の概要

将来医師が必要な県内各地域で働いてもらうことを前提に、一般入試より比較的ラクな特別入試(試験数を減らし主に面接で選抜するなど)を課し、入学金や授業料、生活費や教科書代などの図書購入費用を奨学金として援助を受けることができる制度です。

大学に関係する費用はほぼ全て負担してもらえるので、非常にありがたい制度です。

卒業後医師免許を取得した後は、指定された病院や僻地へ医師として配属され大体10年間ほど働く義務が発生します(義務年限の発生)。

地域枠の制度が設けられている理由

地域枠の制度が設けられている理由

簡単にいうと、医師の偏在化を解消するために作られた制度です。都会には多くの医師が集まりますが、人が少ない地域や離島、僻地などでは、慢性的に医師の数が不足しており、確保することが難しい現実があります。

また医師の数を増やし偏りを無くそうとするだけでなく、地域によっては産婦人科や救急などのなりてが少ない診療科に従事する医師を育成することを目標にしています。

地域枠のメリット

先でも触れたように、地域枠であれば共通テスト+面接だけになるなど、比較的に試験が楽になり合格しやすいという点や、奨学金も受けることができる点が最大のメリットです。

また、地域によっては専門研修プログラムを設けているところもあり、例えば、県が育成に力を入れている診療科の専門医であれば取得が容易であったり、受け入れがある診療科であれば専門医取得をバックアップしてくれる点もメリットになります。

卒業後の進路が決まっているため、初期研修先として病院を探したり就職活動をする必要が無いのもメリットです。

ちなみに、一般入試で入学した後でも大学によっては、地域枠にあるような貸与制度を利用することが可能です。

ちなみに、お金の問題だけなら地域枠を選ぶ前に、様々な奨学金制度があるのでそっちを優先的に検討したほうが良いと思います。国の『高等教育の修学支援新制度』であれば授業料免除と給付型奨学金を受けることができるし、『独立行政法人 日本学生支援機構(JASCO)』も無利子や非常に低い金利で奨学金を受けることができます。

特に国の『高等教育の修学支援新制度』は現役高校受験生に限定した制度でメリットも大きく、検討の価値はアリです!

地域枠のデメリット|ここをクリアしていないのであれば、選択してはダメ!

地域枠のデメリット|ここをクリアしていないのであれば、選択してはダメ!

地域枠で進学した場合で一番ネックになるのが、義務年限の発生専門医取得の問題です。

地域枠で進学し奨学金を借りると、約10年間ほどの義務年限が発生します。義務年限とは、県が指定する病院での研修や勤務、さらに僻地で勤務しないといけない期間です。

約10年間は勤務する場所が決まっており、決められた勤務地以外で働くことができません。また、妊娠や出産、病気など一時的に勤務をすることができなくなった場合は、その期間はカウントされず、その分義務年限の期間が伸びます。

義務年限の影響①勤務地の選択ができない

医師であればある程度転勤はつきものですが、多くは初期研修から後期研修、医局や市中病院であれ、転勤する地域の範囲を事前に調べた上で勤務する病院なり組織を選択することができ、所属先によっては転勤について融通を利かせてくれる場合もあるので、転勤のタイミングや異動先の範囲について目処をつけたりとある程度自分でコントロールすることは出ます。けれど、義務年限下で働く場合は自分でコントロールしようがなく、言われるがまま数年単位で様々な勤務地へ異動していくことになります。

義務年限の影響②希望する専門医をすぐに取得することができない可能性がある

義務年限の影響②希望する専門医をすぐに取得することができない可能性がある

専門医取得に影響が出る可能性があるのが、一番の問題になると思います。

専門医とは診療科ごとのプロフェッショナルの称号のようなもので、必要な症例数を経験したり、論文作成や試験を突破することで、日本専門医機構に認定されます。

専門医を取得するために必要な症例を稼ぐために、症例が集まるような“勉強ができる”診療科がある病院を選んで働いたり医局に入局することが多いです。

専門医取得と義務年限中の何が問題になるのかというと、定められた勤務先病院や医局で、希望の専門医が取得できる程度の“勉強ができる”診療科がないと、取得が叶わないところにあります。

また、もし義務年限を全うした後に、他県で専門医取得を目指そうとした場合、例えばそれが住みたいと思っていた県では専門医取得に制限がかけられ(シーリング)、取得が困難になることもあります。

もちろん、先で触れたように地域枠の中にある研修プログラムの中に、自分が希望する専門医の取得が望めるのであれば問題はありません。また、専門医自体はいつでも目指すことはできるので、例え義務年限中に取得が叶わなくても、県を選ばなければ義務年限を過ぎてから取得を目指すこともできます。

義務年限の影響③労働環境を簡単に変えることができない

義務年限の影響③労働環境を簡単に変えることができない

基本的に医師の偏在化を目的として働くことになるので、医師不足が深刻な場所で勤務する可能性はあります。いわゆるブラックな労働環境である可能性はあります。

また、地域医療が中心になるため、仕事内容と相性が合わないと感じた時はきついかもしれません。

労働環境や仕事内容に疑問を持ってしまった時に、職場を辞めたり変えることができないのは精神的にしんどいと思います。

正直、研修先がハイポ(働きやすい・楽な研修環境)かどうか話題になりますが、実際、医師として働き出す以上、基本的に精神を削られることはあるし寝れないくらい忙しい時期はでてきます。なので、地域枠出身者に限った話ではないです。

ただ、忙しい時期やきつい時期というのは波があり、比較的に穏やかに過ごすことができる日々もあるし、忙しくても充実感でいっぱいな日々もあります。

基本的にどこにいっても忙しいしきついことはあると思いますが、しんどくなった時に相談できる環境や配慮が職場にあるかどうかは大きいと思います。

また、自分が興味のない作業や仕事内容にあたると、例え暇であっても個人的にはしんどいです。

義務年限の影響④離脱による弊害が大きくなる可能性がある

義務年限の影響④離脱による弊害が大きくなる可能性がある

義務年限を満了せずに他の病院に変えたり仕事を辞めること、つまり「離脱」自体はすることができます。

もちろんこの場合は、奨学金を受けていたので返済は免除されず、利子を上乗せた金額分を返済する必要があります。

しかし、県が認めていないのに離脱したとみなされる「不同意離脱」として、仕事を辞めたり勤務先を変えた場合は、ペナルティと呼ばれても仕方ない、制約を課されてしまいます。

「不同意離脱」した時の対応が、個人的には問題が大きいと感じています。

不同意離脱した場合の処遇
不同意離脱した場合の処遇

義務年限を終えず、県の同意なしに辞めてしまったり他の病院へ移ってしまう(不同意離脱)と、現在では、専門医取得に必要な研修プログラムを認定してもらうことができない可能性があります。

2021年に日本専門医機構より、「都道府県と同意されないまま、当該医師が地域枠として課せられた従事要件を履行せず専門研修を修了した場合、原則、専門医機構は当該医師を専門医として不認定とする」とHP上に記載されていた経緯がありますが、その後、離脱の不同意について地域枠医師の人権を侵害するなどとして様々な議論や反発がありました。

そういった経緯も経て、現在では、都道府県や大学、プログラム統括者と該当医師間で話し合った結果、決裂した場合は専門医取得のために必要なプログラムの修了を認めないというのが日本専門医機構の見解になっています。

要は地域枠で入学したのに勝手に病院を変えたり辞めようとするのであれば、「専門医として認定しない」とは言わないが、実際には取得のために必要な過程や機会がなくなる可能性があります。

こう言ってはなんですが、専門医取得は必ずみんな取得するものではないので、取得を目指さないのであれば小さいことかもしれません。

正当な事由にあたる離脱は何?

県が離脱を認める理由として、厚生労働省で以下のような事由について考慮の余地を持たせています。

厚生労働省 地域枠離脱についてより引用

⑥〜⑩まではさておき、①〜⑤までの事由で離脱を考えることは普通に起こりえます。

結婚のようなプライベートな事由も考慮してくれるの?!と思ったのですが…

厚生労働省 地域枠離脱についてより引用

厚生労働省では③「他の都道府県での就労希望」④「結婚」の離脱事由に考慮する姿勢はありますが、実際には、都道府県は「希望する進路と不一致」や「結婚」が離脱の事由として認めない可能性が結構あります。

どの地域でも、大学や都道府県が定める地域枠の募集要項に、①〜⑤のような離脱事由について明記していないため、地域ごとやその時々の対応で差が出てくるのかなと思います。

そもそも離脱自体が簡単でないのと、ましてプライベートな理由だとよっぽどのことでないと離脱するのは難しく、各都道府県・大学がその時に離脱理由として認めてもらえるのはその時の運によるみたいなところはありそうです。

ただ、根底に医師不足や医療格差を改善させるためにできた制度なので、簡単に離脱されてしまうと困るのも理解できます。

個人的には労働環境に関連して起きた病気、特に精神疾患を患った場合がすごく気になります。

簡単に辞めることができない状況で追い込むような事態は避けて欲しいです…

実際の地域枠進学組のリアル

実際の地域枠進学組のリアル

旦那の医学生時代に話を聞いた、地域枠組の学生さんの話は印象深かったです。

大学の同期の地域枠進学組も、将来のことについて悩んでいました。

特に、大学4年生を過ぎたあたりになるとポリクリなども始まり、大学周囲を取り囲む病院の事情なども見えてきます。研修先の病院やその後につながる進路について考え始める同期や卒業後に結婚を控える同期が出始めると、いよいよ義務年限の重みを感じ始めるといった具合です。

中でも話を聞いていて、すごく悩ましいだろうなと思ったのが、女性の結婚と妊娠・出産のタイミングです。

結婚による離脱を正当な理由として認めてもらえるかは、都道府県によるし、ハードルも高いようです。

そうなると、変則的な異動を10年間繰り返すこととなるので、養う覚悟でパートナーについてきてもらうしかないか…とか、

例えば私達の地域では、地域枠出身者同士だったら、医局のはからいで異動を合わせるなどの配慮はできるかもしれないようですが…どうなるかは分からないし…

産休明けの職場復帰は問題ないのでしょうが、そのあとの育児との両立もどうクリアしていくのかも気になります。

産休中や時短勤務、子供の病休で、勤務日数がカウントされずその分の義務年限は繰り越されていくし、都度ある異動先での保育園の確保や、就学タイミングでも通える範囲に小学校はあるのか、など気になります…

最後に

厚かましいですが、この記事を読まれた学生さんの母親の気持ちになって申すとすれば、将来的に自身の進路を狭めてしまう、首を締めてしまう可能性があるような選択肢は簡単には取らないでほしいと思います。

けれど、医学部受験は相当難しく、私大も考えるとかかる費用の次元が違うのもよく分かります。

どうしても医師として働くことを実現するために、一般入試以外で叶うチャンスとして、その強い意志を貫くために地域枠を選択するのは立派だと思います。

地域医療に従事して得られる発見や見える世界もあると思います。

義務年限があるといっても10年ほど、長い人生の中でたったの10年です。そんな考え方もできます。

ちなみに、専門医取得の問題を巡って、地域枠医師を優遇してキャリア形成プログラムを充実させたり、医療僻地へは周囲の医療機関や自治医科大から医師を派遣したり、地域枠出身の医師に配慮する動きはあるようです。

また、医学部の定員内の地域枠の比率を段階的に上げて、一般入試による定員数を下げる動きもあるようです。

参考;令和4年度以降の医学部定員と地域枠について

なので、従来の地域枠の実情は、これから年が経つにつれて変わっていくかもしれません。

卒業生で地域枠出身者の医師が増えたり専門医取得の優遇を考えると、近い将来地域によっては、例えば地域枠出身者でないと取りづらい専門医というのも出てくる可能性なども考えられますね。

現時点では、地域枠という制度は便利な制度ではないということは心の留めておいたほうが良いと思います。

ただ、医学部受験の難易度とお金の問題・自身の覚悟を天秤にかけた上で選択するなら、あなたにとって心強い制度になると思います。

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