「パートナーが医学生となりやがて医師として働くと、どんな人生が待っているのだろう?」
パートナーが医学生の間はもちろん、医師としてのキャリアが落ち着くまで、自分のキャリアの積み方や子育てなど、ある程度こちらが合わせないといけない場面が意外とあります。
そのような場面に直面した時の心づもりができるように、学生から医師として働くまでに葛藤した働き方と子育てについて、経験を交えてご紹介したいと思います。
パートナーが医大に入学した後に考えること
パートナーが医大に受かった時にまず決断する必要があることは、「このまま今の職場で働き続けるか、転職するかどうか」です。
また、子供を持つかどうか、持つのであればタイミングも在学中なのか卒業後まで待つのかも悩むと思います。
さらに、卒業後に医師として働き出した場合の転勤の多さにも振り回されてしまうことがあります。
1.遠方の大学に受かった場合、別居する?ついていくか?で転職の決断を迫られる
医大がある地域は、県内で1箇所しか無いところもザラにあるため、大学に通うために引っ越しを余儀なくされる場合は多いです。
その時にパートナーだけ単身で医大の近くに引っ越すのか、二人で一緒に引っ越すのかで、転職するかどうかを決断する必要があります。
別居を選択する時に注意したいこと
パートナーが単身で、大学の近くへ引っ越すのであれば、仕事を辞めずに続けていくことができると考えますよね。その場合は、学費プラス二人分の生活費を捻出できるれば、別居しても問題なく学生生活を送ることができると思います。
けれどパートナーへの金銭的な援助ができず、パートナーに生活費などを自力でなんとかしてもらうという考えは少し無謀かもしれません。なぜなら、大学に通いながらバイトなどで生計を立てることは物理的に無理だからです。
医学生のカリキュラムは、座学だけでも朝から夕方までフルで入っているのと、実験や実習に加えて、学年が上がるに連れて、病院実習なども始まることもあり、低学年から基本的に拘束時間が長いです。
また、試験の数も他の学科と比べて圧倒的に多く、学年を上がるためには単位を取るだけでなく、病院実習に参加するために、全国規模の試験を突破する必要があるため、かなりの時間を勉強に費やさないといけません。
拘束時間が長く、勉強に専念しないと留年どころか卒業もできず国試も突破できなくなるため、バイトに費やす時間は無いと考えてください。
生活費や学費などの必要なお金は全て奨学金などでまかなうくらいにしないと、現実的ではありません。
ちなみに、婚姻関係にない場合は授業料免除を受けることができない可能性があるため注意が必要です。
2.いつの時期に出産・子育てをしようと考えるか。育児環境も前もって考えておいた方がいい
パートナーと婚姻関係にあるなら、誰しも一度は子供を持つことを考えると思いますが、子供を持つタイミングとしては、在学中か卒業するまで待つかの2択になります。
また出産するに当たって、無事に卒業できるように、また食いっぱぐれないようにするためにも、仕事や育児などの取り巻く環境についても前もって考えておいたほうが良いです。
女性のパートナーが在学中に妊娠出産を考える場合
学生が女性の場合は、臨月・産後数週間は休学制度を利用し1年ほどは休学することになります。そこまでは良いのですが、休学があけてから子育てと学業の両立が始まるとかなり大変で、実際は仕事と子育ての両立よりも大変になると思います。そのため、周囲の協力は不可欠です。
というのも子供が小さいうちは頻繁に想像以上に体調を崩すことが多く、基本的に熱・下痢・酷い咳鼻水は保育園に預かってもらえないもしくはお迎えに来てもらうよう呼び出されます。月の半分は保育園を休むという状況が1,2年続くこともよくあります。
医学部を無事に卒業するためには、一人で子供の病気対応は絶対できない
授業を休みすぎると単位の取得ができず、卒業ができない事態もあります。また、ポリクリや研究室配属を課す大学もあるため拘束時間が長くなることもあり、さらに遠方への実習が多いため、保育園のお迎えや病気などの対応は、とても一人でこなすことはできず、必ず誰か他の人の助けが必要です。
女性が学生をしながら子供を持つ選択をするなら、男性パートナーからのフォローは必須で、子供の急な病気の対応ができるような育児に理解がある職場でないと現実的ではありません。それが難しければ、実家に頼れる環境にあることが必須になります。
保育園と併せて利用できるように、ベビーシッターについても予め調べておくと良いかもしれません。急な病気対応やお迎えに対応してもらえる土台づくりとして、ベビーシッターを日頃から利用しておきサポート体制を増やしておくことも視野に入れます。
男性のパートナーが在学中に妊娠出産を考える場合
学生が男性の場合は、生計をたてている女性が妊娠・出産することになると思います。妊娠後期から出産を経て、産後数ヶ月は基本的に働くことは難しく、場合によっては産後1、2年は保育園が決まらず働きに出るのが難しいこともあります。
なので、この場合は女性が勤める会社に産休制度・育休制度があり、さらに社会保険に加入していることが必須条件になってきます。
実際に私達はこのパターンで子育てを経験しました。
完全に生計を担っていたため、妊娠を覚悟するまでにかなり金銭面に神経を使っていました。
ところが思っていた以上に、会社や国の支えがしっかりしていたため妊娠中や産後でお金に苦労することはありませんでした。
会社に産休・育休制度がある最大のメリットは、休業中の給与補償があること
産休制度や育休制度が整っている会社であれば、程度の差はあるかもしれませんが、産前6週間〜産後8週間(双子などの多胎児の場合は、産前14週間前から産休開始)に渡る期間が産休として労働基準法で定められているため、この産休期間中の給与や賞与(ボーナス)を全額保証してくれる場合があります。また、たとえ会社からの給与が発生しなくても、出産手当金が社会保険から出るので無給になることはありません。
社会保険に加入している場合は、給与が発生しなくなった後でも保険から補償してもらえる
さらに、厚生年金保険などの社会保険に会社が加入していると、産休後(産後8週を過ぎた後)から育休に切り替わり、会社からの給与が発生しなくなった後(もしくは、出産手当金の給付が終わった後)に雇用保険から育児休業給付金として給与の5〜7割ほど支給されます。
もし会社が社会保険に加入していない場合は、労働者は国民健康保険に入るだけになるので、出産手当も育児休業給付金ももらうことができず、産後職場復帰するまでは無給になってしまいます。
ちなみに、育児休業給付金を受給している間は、保険料の支払いは発生しません。
しかも、扶養対象であるパートナーや子供についても免除されます!
自分自身も家族も守るために、会社の産休・育休制度の充実度と社会保険の加入は必須
産前産後で働けなくなる場合の生活費の確保は最も重要です。国民健康保険だけで、パートナーも子供の扶養をすることはかなり厳しいため、最低でも社会保険に加入している会社に勤めることをオススメします。
ちなみに、産休育休制度があっても前例がないような会社の場合は、必要な制度についての説明をしてもらえなかったり、そもそも庶務が必要な手続きを知らない場合があり厄介だったりします。
社会保険の加入は必須で、理想的なのは、産休・育休制度が整っていて、活用されている前例もある会社になります。
なんとなく概要がつかめたら、制度の仕組みや手続き方法の詳細を日本年金機構でチェックしてみてください。
本来は保険加入している雇い主側が従業員へ周知したり手続きを行うものですが、よく分かっていない場合もあるため、ぜひご自分でも確認しておくことをおすすめします!
卒業して働きだしてから子供をもつことを考える
このパターンが、経済面を心配する必要がないため、一番安全な選択肢になるかもしれません。
ただし、留年・国試浪人の可能性があるため予想外に働きだすまでに時間がかかり、女性の場合は妊娠・出産適齢期を超えてしまうリスクはあります。
また、研修期間は基本忙しく、研修中のため有給は少なく、基本的に産休育休のような制度はありません。産休などで休むことはできますが、その分研修期間が延長するので、研修医を修了するのが遅くなります。
3.卒業後、研修医として働く間は数ヶ月単位の転勤がある、研修を終えた後も進路によっては1年ごとの転勤がある
研修を終えた後の進路は、多くが専門医を取得するために、症例数が多い診療科がある病院や大学病院、大学院に行きます。
専門医を取るために必要な症例数を集めるためには、必然的に関連病院や分院があるような大きい病院や大学病院に限られてきます。また、より専門性の高い大学へ勉強のために国内留学する場合もあります。
そうなると、転勤はやむ終えず、短い場合で半年、多くは1,2年単位で転勤することになります。
市中病院で専門医取得を目指す場合
市中病院に職員として採用してもらう場合、医局ほど頻度は多くありませんが、国内留学として数ヶ月から数年の転勤がある病院は多いです。けれど、もともと勤務している病院に戻ってくることが前提なので、一時的な異動に留まります。
また、研鑽のために必要な異動なので、転勤の頻度もある程度自分でコントロールできることもあり、単身赴任を一時的にするだけで済むことが多いようです。
そのため市中病院に勤務する場合は、パートナーが職場を変えずに働き続けることができる選択肢になります。
医局に行くなら、1,2年単位の転勤を覚悟
大学の医局に配属したら、症例稼ぎのためだけでなく、各関係先地方の病院にヘルプとして派遣されることも多いため、1,2年毎に全国的に異動することになりかなり流動的に勤務地が変わります。
そのため、もし一緒に暮らしていきたいのであればついていく覚悟が必要になります。
この場合、例えパートナーが資格持ちだったり手に職をつけていても、異動について行くことで職場が1,2年で変わるため、慣れた頃に辞めたりとキャリア形成の意味でも現場で働くのは厳しい場合もあります。
まとめ
実際にパートナーが大学に入学すると、通う大学の場所や学費・生活費が工面できるかによって転職を迫られます。
また、夫婦であるがゆえに家族計画を立てることは自然なのですが、学生であることや卒業後も研修医という特殊な勤務形態、転勤が多い職種でもあるため、「子育てのタイミングはいつにするか」「勤務地を合わせるために自分の転職をするかどうか」など、柔軟な対応が求められることも多いです。
今回は、私達の一例も交えて子育てのタイミングと転職をするかどうかについてまとめました。実際にやってみないと分からない、経験してみないと分からないことなのですが、私達の経験が参考になれば幸いです。
コメント
こんにちは!ご主人さんも奥様もほんとに大変だったと思います。ほぼおんなじ状況です。現在6年生、2024.2月国試予定フルタイム辞めるの不安ですが、第二子の検討などされてらっしゃいますか?大黒柱として悩んでおります←(30代育休主婦)
はじめまして!
Momokoさんもここまでご苦労されたかと思います。出産のタイミングや育児と仕事のバランスはかなり悩まれたのではないかなと、私もそうでしたのですごく理解できます。
国試勉強が始まると、なかなか相手に育児をまかせにくくなりますよね。
さて私達の場合は、国試に受かって医師免許が確実に取得できるまでは、落ちてしまった後のリスクが大きいと考え、二人目の妊娠は控えていました。
たしか、国試浪人の場合は卒業扱いになるので奨学金を借りることもできなくなるのと、妊娠中だと再就職も難しいと思うので、経済面でリスクが大きいなと考えました。
なので、万が一に備えて働きに出るフットワークは残していました 笑
現在、旦那は初期研修1年目である程度仕事に慣れてきた様子なので、そろそろ二人目を考えているところです。
コメントありがとうございます、励みになります。お役に立てたら幸いです!